「胸熱(むねあつ)」は、「感動で胸が熱くなる」という意味のネットスラングです。
2009年9月から使われるようになり、同年の年末頃から火がついて、2010年に大きく流行しました。
当初はネット掲示板の2ちゃんねるで使われていましたが、流行から広く使われるようになりました。
死語度は40%です。
本記事では「胸熱」の意味や由来を解説して、現代では死語なのかを詳しく考察します。
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「胸熱」の意味を解説

「胸熱」の意味を解説します。
「胸熱」は感動で胸にこみあげてくる気持ち
「胸熱」は「感動で熱い気持ちが、ジーンと胸にこみあげてくるとき」に使う言葉です。
特に「感動を覚えた」ということを訴えるために、ポジティブな意味で使います。
「胸熱」の例文

「胸熱」の使い方を知るために、以下の例文を紹介します。
使い方①

推しがイベント成功に向かって、メンバーと真剣に打ち合わせしてる姿が胸熱……!
使い方②



もう走る力は残っていないのに、足を引きずりながらゴールを目指すの胸熱!
使い方③



一生で1枚しか絵が売れなかったのに、ずっと描き続けたこと考えると胸熱
使い方④



私が卒業したあとも後輩ががんばって、キラキラ輝いてる姿が見れて、本当にうれしくて胸熱だった!
使い方⑤



レジェンド選手が再集結した光景が、もうそれだけで胸熱
「胸熱」の由来を解説


「胸熱」は2009年9月から使われるようになり、同年の年末頃から火がついて、2010年に大きく流行しました。
それまでは、
胸が熱いっ(*’-‘*)
という表現はありましたが、ネット掲示板の2ちゃんねるで「胸熱」が使われるようになると、SNSなどでも広く使われるようになりました。
「胸が熱くなる」という慣用句から生まれた
「胸熱」は、感動して熱い気持ちがこみ上げてくるという意味の、「胸が熱くなる」からきています。
もともと「胸が熱くなる」という言葉は、「感動する」という限定的なせまい意味だけでなく、悲しいときなどにも使う言葉でした。
もともとは悲しみの表現としても使われていた
大正時代の文学作品などを見てみると、現代のような感動するというポジティブな使い方だけでなく、「悲しい」「辛い」「心細い」といったネガティブなニュアンスでも使われていました。
有島武郎の作品にも悲しみの表現に使われています。
「そんなら私はどうしてもいやです。幾人も妾を持つてゐるやうな高利貸しのところになんぞ……お父さんもちつと考へて下さればい々に」
といふ中に、彼女は胸が熱くなつて涙ぐんでしまった。兄さんですら、 小さい時、あれほど自分を可愛がってくれた兄さんですら、 丸で自分の事しか考へてはないしお父さんはお父さんで、自分の娘だか、他人の娘だか区別のないやうな仕向け方をする、 と思ふと、 おせいは誰れにたよる的もないのを感じた。
財界レビュー誌など、多くの書籍で同様の表現があります。
思うさまにぬらした。僕はどうしても泣けなかつた。胸が熱くなると。熱い酒をグウと一気に飲みほして、乾干た涙の出ない悲しみを苦しんだ。
引用:財界レヴュー社 [編]『財界レヴュー』2(10月號)(10),財界レヴュー社,1924-10. 国立国会図書館デジタルコレクション
現代では感動したときに使う言葉
現代では、「感動したときに使う」という認識が一般化されています。
胸が熱くなる。は悲しい事が起きた時に使って問題有りませんか? 失礼に当たりませんよね? 表現合ってますよね?
引用:ヤフー知恵袋
といった質問サイトでの質問でも、ネガティブな場面では使わないという回答がベストアンサーになっています。
この表現は合っていません。 何故なら 胸が熱くなる、は映画やスポーツを観て 感動した時に使う表現だからです。 悲しい時に使うのであれば 「胸が痛くなる」「胸が張り裂けそうになる」 のほうがしっくり来ます。
引用:ヤフー知恵袋
これは単純に間違いとはいえず、辞書ツールで広辞苑の簡易的な説明には、「感動がこみ上げてくる」と書かれています。
感動がこみ上げてくる。じいんとする。「やさしい言葉に―」
引用:広辞苑第七版
大辞林でも同じです。
じいんと感動がこみ上げてくる。
引用:大辞林4.0
1970年代頃から感動したときに使う言葉として一般化していった
調べていると、1970年代頃から、感動したときに「胸が熱くなる」という表現を使うことが、多くなったようです。
私は彼の友情の数々を思い出すと、今でも胸が熱くなる。私が失意のドン底にあった時に、あらゆる意味で私を励まし力づけてくれたのは火野さんだった。
引用:九州文学編集部 編『九州文学』6(4)(182),九州文学社,1960-04. 国立国会図書館デジタルコレクション
1980年代でも、感動の場面で多く使われています。
「古里」「故郷」いろいろ書き方はあるが、ふるさと--なんと響きのよい言葉であろうか。旅先などで、ふっと思い起すと、ジーンと胸が熱くなるようなことがある。次元を越した世界が、ふるさとだ。 ふるさとの味である。
引用:粟野修 [著]『散る桜残る桜の記』,[粟野修],1980.5. 国立国会図書館デジタルコレクション
自然と、感動の場面で使う言葉だという印象が、一般に強くなっていったようです。
胸熱の言い換え
「胸熱」はネットスラングのため、相手が言葉の意味を知らない場合があります。
またフォーマルな場面や、ビジネスシーンでは使用を避けるべきです。
そこで胸熱が伝わらなかった場合や、使用を控えたほうがいい場面での言い換えを紹介します。
胸が熱くなる
ビジネスシーンでは、省略する前の「胸が熱くなる」が適切です。
胸を打つ
心に刺さって感動を呼び起こす場面で使います。
胸に迫る
強い気持ちや感動が抑えきれない状態のことです。
感情が込み上げてくる様子を表す言葉のため、「胸熱」の言い換えとして使えます。
胸がいっぱいになる
「胸が一杯になる」は、喜びや、悲しみ、または感動することで、感情があふれそうになったときに使います。
熱い感情で満たされた状態は、「胸熱」の言い換えとして使えます。
感極まる
「感極まる」は言葉では表現できないほど、激しい感情を抱いたときに使います。
泣くほど感動したり、あまりに興奮したときに使う表現のため、「胸熱」に近い表現といえます。
心が震える
「心が震える」は感情を揺さぶるで出来事で、感動を呼び起こされたときに使います。
「心が震えている状態」は、「胸熱な状況」といえます。
「胸熱」は古い?死語なのか考察してみた


「胸熱」の死語度は40%です。
現在でも使う人が多い言葉だからです。
たしかに流行化から10年以上がたち、流行期より使われる頻度が減っているため、古いという印象を持たれることはあります。
しかし使用頻度が減っている理由としては、「言葉として一般化された」ために、流行ではなく「自然と使う程度に落ち着いてきたから」だと考えられます。
ただし、もともとがネットスラングのため、現在も昔も「胸熱」を使わない層がいるため、今後は死語になる可能性は十分にあります。
胸熱まとめ
本記事では「胸熱」を解説しました。
「胸熱」は、「感動で胸が熱くなる」という意味のネットスラングです。
2009年9月から使われるようになり、同年の年末頃から火がついて、2010年に大きく流行しました。
「胸が熱くなる」という言葉自体は、ポジティブな意味でも、ネガティブな意味でも、感情がこみ上げてきた場面で使う言葉です。
しかし1970年代頃から、感動したときに使うことが多くなったため、現代ではポジティブな場面を連想する言葉になっています。
よくある質問
「胸熱」や「胸が熱くなる」という言葉は悲しい場面でも使えますか?
もともとは感情が高まって、胸に熱い気持ちがこみ上げてくることを意味するため、悲しい場面でも使われていた言葉です。
ただし1970年頃から感動した場面で使われることが多くなったため、相手によっては誤解を与える可能性があります。
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