「ペアルック」は1980年代に流行した死語です。
「ペアルック」とはカップルや夫婦が、おそろいの服を着て仲のよさを周囲に発信することで、お互いの愛情や信頼感を高め合う行為です。

- 引用:楽天市場
「ペアルック」は1980年代に流行はしましたが、今ほど個の時代ではなったため、今よりむしろ「バカップル」と揶揄される場合もありました。
そこにバブル崩壊が起きて、1990年代のシニカルな空気感の中で下火となり、「ペアルック」は死語となりました。
しかし「ペアルック」は2010年代から復活のきざしがあり、現代の若者世代では「シミラールック」などの派生語に置き換えられて楽しまれています。
「シミラールック」とは、色や系統、形、柄など、属性として共通点をそろえて、「雰囲気」を同じにするコーディネートです。

「シミラールック」はほとんど「ペアルック」といっていい、二人の服装がほとんど一致した組み合わせも含みます。
ただし「ペアルック」より広く、グラデーションのあるくくりになっています。
そこで本記事では「ペアルック」という死語の変遷をたどりながら、実際に「ペアルック」が現代でも通用するのか考察します。
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「ペアルック」という死語の意味

「ペアルック」の意味はファッションそのものより、夫婦やカップルがおそろいの服を着て、お互いの信頼感を高めることに価値があります。
「ペアルック」はカップルが愛情や信頼感を確かめ合う行為
「ペアルック」は夫婦やカップルが、服装をそろえることで、愛情や信頼感を確かめ合う行為です。
同じ価値観により安心感を得られるとともに、二人の世界を見える形を確かめ合えます。
しかし一方で「ペアルック」が流行した1980年代の当時から、「バカップル」と揶揄されたり、パートナーを「自分のものだとマーキングしたい意図」があるはずだと勘ぐる見方もあります。

さみしい見方じゃのう
そこで「ペアルック」が社会的にどのような隆盛とともに、受け止められてきたのかを考えます。
「ペアルック」という死語の歴史


「ペアルック」は1980年代に流行した死語です。
もともとは1970年代にアメリカの雑誌で強く提案され、文化の一つとして日本に入ってきました。
1970年代のアメリカから「ペアルック」は輸入された


- image credit: SadAndUseless
1970年代のアメリカの雑誌では、すでにカップルでおそろいのファッションが強く提案されていました。
特にアメリカではイベントを盛り上げる目的で着られることが多かったようです。



恥ずかしくなかったんかいのう
当時の日本は流行の先端として、欧米のファッションを取り入れることが多かったことから、「ペアルック」が輸入されたと考えられます。
「ペアルック」という言葉はアメリカになかった
もともと「ペアルック」という単語は欧米に存在しません。
カップルに限定しない「matching outfits」などの言葉が使われます。
男女でおそろいのファッションを楽しむ文化が、1970年代に輸入されて日本で流行した過程で、「ペアルック」という言葉も発生しました。



いわゆる和製英語じゃな
「ペア=同じ」「ルック=見た目」という二語を、ひとつにまとめたものです。
1980年代に流行した「ペアルック」


「ペアルック」は1980年代にもっとも流行しました。
高度経済成長期からバブル経済にかけての豊かな時代で、若者のファッションに対する関心が高まっていました。
当時はおそろいのスタジャンなどを着たカップルが多くいました。


- 引用:楽天市場
しかしながら1990年代に入り、山一証券や拓銀の経営破たんに象徴される、バブル崩壊で社会の雰囲気は一変しました。
次第に「ペアルック」を選ぶカップルは減少し、話題にあがることもほとんどなくなりました。
結果として死語になりました。
1980年代の不良カルチャーでも受け入れられていた


1980年代に「ペアルック」は幅広い層に受け入れられていました。
そこには「ツッパリ」と呼ばれる不良カルチャーの少年少女も含みます。
当時の不良カルチャーには、「見た目は恐いけど心はピュア」という価値観がありました。
その理解者として優等生の女子と、不良少年のカップリングが多くのサブカルチャーで描かれました。


「ペアルック」も「実は心はピュアな不良少年」像の、延長線上で受け入れられました。



今でいうギャップ萌えじゃの
ピュアな心を持つ価値観の不良少年は、パートナーに対しては純真で一途なため、当時の不良文化圏のカップルの多くが「ペアルック」を経験しています。
早熟なため、結婚も早い傾向にありました。
対して硬派という価値観もあったため、「ペアルック」のような文化には、まったく触れない路線の不良少年もいました。
1990年代のバブル崩壊で社会が一変した
1990年代に入り、1980年代とは打って変わった時代になりました。
- バブル崩壊による景気後退と「失われた10年」の始まり
- 山一証券や拓銀の経営破たん
- 就職氷河期の到来
- 阪神・淡路大震災
- オウム真理教 地下鉄サリン事件
一方で世間の暗い社会観とは対称的に、サブカルチャーやファッションは大きく花開きました。



暗いニュースが多くても、楽しそうな若者はたくさんいたんじゃ
- Jポップの黄金期(安室奈美恵、浜崎あゆみなど)
- 渋谷系、裏原系ファッションの流行
- ストリートカルチャーの隆盛
- コギャル文化の拡大
B-BOYなどのカルチャーが社会に知られるようになったのも、この頃です。
ストリート系のファッションが若者文化に広がっていく過程で、同時に「ペアルック」を楽しむ社会的な余地も減っていきました。
「ペアルック」の復活
近年、「ペアルック」は形を変えて復活し、夫婦やカップルに楽しまれています。
2010年代に再熱したペアルック
2000年代には「ペアルック」は死語になっていましたが、2010年代に入り有名人が「ペアルック」の画像をSNSに載せたことで、風向きが変わりました。
2010年代の有名人の例
- きゃりーぱみゅぱみゅさん&セカイノオワリ深瀬さんカップル
- 木下優樹菜さんと藤本敏史さん(FUJIWARA)夫婦
これらの事例では、多くの「かわいい!」という評価を集めました。



わしもそんな恋がしたかったわい、メフィストフェレスはおらんかの


風向きが変わった背景には、SNSの発展と普及により、「ペアルック」の意味が変わってきたことがあります。
1980年代の当時より、個を尊重する時代となり、SNSで「ペアルック」を楽しむことに抵抗感がさがりました。
SNSで「いいね!」をもらうことで、社会に認められやすくなっている面もあります。



世界にラヴを発信じゃ!
2010年代はインスタ映えも意識されたため、女友達同士でおそろいの服を着る「双子コーデ」を発信するなど、コスプレの感覚が入り込んできました。
カップルや友達で服の色・柄を合わるなど、ファッションの一部だけおそろいにする、「リンクコーデ」も生まれました。


ペアルックの復活にはハロウィンイベントの浸透が影響している
SNSによる「ペアルック」の発信で復活した「ペアルック」ですが、その土壌として日本のハロウィンイベントの盛り上がりが、一役買っているという意見もあります。


ハロウィンイベントは日本社会にコスプレ文化を受け入れやすいものにしました。
大きなきっかけは2つあります。
1つめは2011年に敏腕マーケターの盛岡剛さんが仕掛けた、ユニバーサルスタジオジャパンのハロウィンイベントです。


当時のユニバーサルスタジオジャパンは経営が落ち込んでいましたが、テーマパークの業界ではもっとも集客の谷になる秋に、40万人ものお客さんをハロウィンイベントで集めました。



わしのふるさとでも、ハロウィンになると子供達がやってくるぞよ
2つめは2013年から始まった渋谷のハロウィンイベントです。


自然発生的に仮装した人々が渋谷駅周辺に大勢集まり、迷惑行為が問題とされながら、その華々しい盛り上がりが大きく報道されました。
ハロウィンイベントのポジティブな感情が広く浸透することで、各地で子供達のためのハロウィンイベントが多く催されました。
小さい頃からハロウィンなどのイベントに慣れ親しんできた世代にとって、「ペアルック」はコスプレや仮装の延長線上でとらえられ、受け入れやすい土壌が作られました。
ジェンダー平等が意識されることで受け入れやすくなった
1980年代の男性にとっては、「ペアルック」は「男らしくない恥ずかしいもの」でした。
「ピュア」などの価値観や観点の転換もありましたが、多くの男性にとって抵抗のあるものでした。
しかしジェンダー平等が意識されるようになった現代、過去に比べて男女の差による「ペアルック」の抵抗感は、若者にとってほとんどなくなりつつあります。


2000年代には「草食男子」と揶揄されることもありましたが、女性の社会への参画に平行して、「男らしさ」や「女らしさ」で見る意味は、ほとんどありません。
2020年代はシミラールックとして愛されている
現代では「ペアルック」は「シミラールック」などの形で若者に受け入れられています。


「シミラールック」とは、色や系統、形、柄など、属性として共通点をそろえて、「雰囲気」を同じにするコーディネートです。
過去の「ペアルック」でおそろいのスタジャンを着たような、必ずしもまったく同じアイテムではなく、服の色や柄、雰囲気を合わせる「リンクコーデ」として楽しまれています。


- 引用:楽天市場
言葉としては「ペアルック」は死語になりましたが、夫婦やカップルのあいだでは、今も楽しまれています。
「ペアルック」まとめ
「ペアルック」は1980年代に使われていた死語です。
しかしながら現代では「シミラールック」や「カップルコード」、「おそろいコーデ」などの形で、夫婦やカップルで楽しまれています。
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